フロアズでなにぬねの - 2/6

の味


涙の味を変えることができる魔法薬を作った。

何しろ涙というものは、直前に何を食べていても、どんな状況で流したとしても、等しく塩辛い水の味がする。

だから、ダメなのだ。

もっと、甘かったり辛かったりするといいのではないか。

と、いうわけで早速飲んでみた。

ごくり、と飲み下した魔法薬は、いつも通り、とびきり不味い。

下に残るドロリとした後味に顔を顰めつつ、水差しに手を伸ばす。

魔法薬を飲んだ後の水は、いつも通り、とびきり美味い。

「さて、」

この薬が成功しているのか、はたまた失敗しているのかは、生憎、薬を飲んだだけでは分からない。

そう、泣かなければいけない。

僕はまず、着けていたゴーグルを外し、実験着を畳んだ。

いくら人払いをしているとはいえ、実験室で泣くわけにはいかない。万が一、誰かに見つかれば面倒なことになる。

とはいえ、この薬がどのくらい効果がものかも分からないので、早急に自室に戻らなくては。

マジカルペンを振り、サッと片づけを済ませ、僕はいつもより早足で寮へと足を向けた。

そして寮の廊下で、おぶさりウツボに捕まった。

「なぁに、そんなに急いで」

「重いんですが」

「なんか、面白いことでも思いついたの?」

フロイドが実験着を指さして、口をニヤつかせる。魔法薬の匂いでも嗅ぎ取ったのだろう。

「ああ、そうだ。フロイド、僕を泣かしてください」

「はぁ?」

「検証が、まだなんですよ」

そう言って、薬の効果を説明する。

「殴ってもいいですし、罵詈雑言を吐いてもいいです」

とりあえず涙がひと粒出てくれればいい。僕はそう言って、ギュッと目を瞑った。

フロイドが、大きくため息をついた音が聞こえる。

何か言いたいことでもあるのかと言う前に、唇へやわらかいものが押しつけられた。

目を開く。目の前に口を尖らせた彼がいる。

「アズール、泣くとスゲー面倒になるから、ヤダ」

「は?」

「涙なんかよりさぁ、アズールの小言がキャンディーになる魔法薬とかの方が、面白くね?そしたら、毎日キャンディー食べ放題じゃん」

フロイドの指先が僕の唇をなぞる。その指は頬を通って、涙袋を何度か擦って、そっと離れた。

「美味しい方がいいかと思ったんです」

昨夜、僕の流した涙を、あなたが舐めたりなんてするから。

しょっぱい、なんて困った顔をするから。

「オレのせい?」

「フロイドのためです」

「じゃあ、尚更いらねぇよ。そんな薬」

そう言って彼は、「やっぱり小言キャンディーにしよ?」と笑った。