フロアズでたちつてと - 5/6

Tirami


ボーッとした頭にヴィンヴィンという音が響く。

僕の手元で震えるブレンダーが、クリームチーズと生クリームと卵黄を休む間もなく混ぜ合わせている。

「それ、ちゃんと混ざってる?」すぐ隣でフロイドが、器にビスケットを適当に投げ込みながら聞いてくる。

「たぶん」

「たぶんじゃダメだってば」

辺りに濃いコーヒーの匂いがしているはずだけど、鼻が詰まっていてよく分からない。コーヒーの匂いは嫌いじゃないから、残念だ。

「ふんわりボテッとするまでちゃんと混ぜたら、おいしくなんの」

ちゃんと持って、という言葉と共に、後ろから右手を支えられた。

ボウルを支えている手が増える。

「砂糖は? 入れた?」

「……太るだろ」

「バァカ。オレ達も食べるんだから、ちゃんと甘くしてよ」

そう言ってフロイドはボウルの中にスプーン山盛りの砂糖を5杯半も入れた。なんてことだ。

「入れすぎ」

「てない。ほら、さっさと混ぜる」

ペチペチと右腕を叩かれて、渋々ブレンダーを持つ手を動かす。

僕が作業に集中するのを確認して、フロイドは四角いガラスの皿にビスケットを移しだした。ビスケットの数が心なしか少なく見える皿は、クリームの部分が好きなジェイドのモノだろう。

「アズールはカステラの方が好きだろうけど、今日はビスケットで我慢してね」

今度はちゃんとカステラで作ろうね、と笑いかける男を、ジロリとねめつける。

「稚魚扱いをするな」

「はぁ?」

引き出しの中からゴムベラを取り出して振り返ったフロイドが、物わかりの悪い奴に向けるような、呆れた目をした。

「違ぇし」

「何がですか」

スッと伸びてきた手が、ブレンダーを持つ僕の手を掴んで、スイッチを切る。ブレンダーはそのままその手にひったくられ、代わりにゴムベラが手の中に残った。

質問の答えが返ってこないまま、ガラス皿を顎で示して「3等分ね」と短い言葉がとんでくる。僕は少し不貞腐れながら、クリームを皿の中に分け始めた。

クリームをちょっとずつ入れる端から、フロイドがビスケットを放り込む。店に出すわけではないからいいけれど、ずいぶん雑だ。

「……アズールが言ったんじゃん」

「だから、何を」

全てのクリームを分け終えたところで、今度はボウルをひったくられた。

それをガタン、と流しに置きながら、フロイドが尖らせた唇を動かす。

「僕の“恋人”として元気づけてくださいよ、って」

言ったんじゃん、と彼にしては小さな声が、蛇口から出てきた水の音に混じった。