フロアズでたちつてと - 4/6

がほしいと言ってよ


欲張りなアズールって、かわいいと思う。

「アレが欲しい」「コレが欲しい」ってもっと言ってくれないかな、って考えてたら、口に出ていたみたいで、傍にいたジェイドに「物好きですね」って笑われた。

だけど、結構本気でそう思ってるんだよね。

アズールは、形のあるものとか価値のあるものが好き。

情だとか、思いだとか、ありふれた言葉だとか。そういうのは、目にも入らないって感じ。

オレがどんだけ「スキだよ」って言っても、「はいはい」って流されるのは、きっと言葉に形がないからだ。

もし「スキ」って言葉を形に出来るなら、折角だしアズールの好きな形にするのがいいと思う。

山盛りのマドル札とか、貴重な魔法石とか。

それがオレの「スキ」って気持ちをちゃんと表してくれるかは分からないけど、きっとアズールの目には価値があるものとして映るんじゃないかなぁ。何にしろ、それで喜んでくれるならいいじゃんね。

でも、残念だけど、オレの言葉はその形にならない。

オレがアズールにあげるべき形は、もう決まっている。

 

サンゴの海にいた頃、3人で月を見に海面に顔を出したことがある。

月を見に、というか、アズールの魔法薬を完成させるために、だったのだけど。

アズールが3日かけて作った魔法薬は、満月の光に当てなければ完成しないものだった。

1人で海面に上がるつもりだったアズールの後を、ジェイドと一緒にコッソリついていったのだ。後ろから脅かしたときのアズールの叫び声と表情は、今思い出しても笑える。

そうやってたどり着いた海面から顔を出したら、満月はオレたちの上にぽっかり浮かんでいた。それは思ったよりもずっと明るくて、隣にいたアズールの顔がはっきり見えるくらいだった。

だから、その時アズールの今よりぷくっとした手が、そっと月に伸ばされるところもバッチリ見えたのだ。キラキラした瞳に月だけを映して、焦がれるような顔をして、アズールは左手を伸ばしていた。

アズールがジェイドに声をかけられて我に返るまでのその数秒間を、オレはきっと忘れられない。

その手は、まっすぐ“月”を欲しがっていた。

オレは“それ”がとても羨ましかった。

 

あれから何度か月を手に入れようとしたけれど、いまだにオレの手は月に届いていない。

アズールは月の欠片みたいな石や色の似たコインを喜んでくれるけど、オレはちゃんと本物の“月”をプレゼントしてあげるつもりでいる。

だから一言、オレに強請ってくんないかなぁ。