ちょっと待って
“ちょっと”待つってのが嫌だ。
だって、ジェイドもアズールも「ちょっと待ってください」って言うくせに、待つのがちょっとだった試しがない。
つーか、ちょっとってどんだけだよ。
10分? 5分? 3分? 1分? 10秒?
この前はアズールに30分待たされた。さすがに30分はちょっとじゃねーと思う。
そうジェイドにこぼしたら、この“ちょっと”が楽しめるといいことがあるんだって言った。
カップ麺が3分も待たなくちゃいけないのは、「ちょっと待つことでお腹がへって、よりおいしく食べられるからなのだそうですよ」だって。
それに、ジェイドがよく入れてる紅茶にも蒸らすっていうちょっと待つ作業があって、お茶がおいしくなるようにする大事な時間なんだそうだ。
そう言われてもさぁ。
「そのちょっとがあれば、もっと二人と一緒にいられるじゃん」
思ったことをそのまま口に出したら、ジェイドは嬉しそうな顔をした。
「アズールにもそう言ってあげれば、きっと喜びますよ」
「今のジェイドみたいな顔されるんなら、絶対言わね」
締まりのない頬っぺたをつついてやれば、そのニヤニヤ面の主は「おやおや」と鳴いた。
「それは残念ですね。ならば、そんな寂しがり屋のフロイドに1つお教えしましょうか」
「寂しがり屋じゃねーし」
「まあまあ。悪い話じゃありませんよ」
「おもしれぇ話?」
「フロイド次第ですかね」
ジェイドは悪だくみするときの顔で、オレの耳元に口を寄せた。ごにょごにょにょ。
「ねー、まだぁ?」
アズールの“ちょっと待って”を聞いてから、20分待った。オレってエライな~。
後は眠るだけじゃねぇの?って時間でも、アズールはなかなかベッドに入ろうとしない。
ウミヘビくんに貸すって口約束した本なんていつでもよくね? むしろ貸さなくていいし。
「もー、今日はおしまい!」
「うわ!」
眠たげな眼で本棚の前に立っていたアズールを持ち上げて、ベッドに連行する。
シーツの上に投げ落とされたことにギャアギャア文句を言う顎を押さえて、その目をジッと見た。
ちょっと、ねぇ……。
1、2、3。
「な、何ですか」
アズールがそわりと目を泳がせる。
4、5、6。
「フロイド?」
窺うように名前を呼ぶ声がする。
7、8、9。
「あの」
10!
「アズール」
押さえていた顎をそっと人差し指で擽ると、ボッとアズールの頬が赤くなる。
「あはっ」
かわいーの。
うんうん。ジェイドの言う通りだ。ちょっと待つのもいいかもしんないな。
ま、たまには、だけどね。
