そっぽ向いてて
期待はしないようにしている。フロイドはとても自由なヤツだから。
もしかしてコレは恋なのではと思うのと同じくらい、そんなわけないことを思い知らされているから。
まるでデートのように2人で出かけることがあっても、彼が僕と最後まで一緒に過ごしたことはない。
たまにベッドの上で戯れることがあっても、次の瞬間「それじゃあ、バイバイ」と言えるヤツなのだ。
コッソリ会う約束をしていても、言い出しっぺのアイツが時間通りに来るということはないし、約束をすっぽかして誰かと遊んでいることもある。
でも、それを咎めたりはしない。僕にそんな権利はない。
ならば“遊び”だと考えればいい。これは恋ではない、遊びなのだと。
フロイドが、僕という生き物に厭きてしまうまでの遊びだ。
それまで、コチラも勝手にルールを作って、ゲームとして楽しめばいい。
簡単だ。
好きになってはいけない。本気にしてはいけない。そういうゲームだ。
いろんな書物にも書いてあることなので有名な話ではあるが、恋とは、好きになった方が負けなのだそうだ。
勝ち負けであるならば、負けたくはない。
彼が僕に厭きるのが早いか、僕が彼を好きになってしまうのが早いか。
そんなつもりなかったのに、なんて台詞は言わせてやらない。
そちらが勝負に負けたのですよ、と笑ってやるぐらいではないと、僕の気が済まない。
誘ってくるのは、いつもアイツなんだから。
それを受けるか受けないか、主導権は僕にあるんだ。
だったら、恋と呼ぶかどうかは、僕に決める権利があるって思いたい。
誰かが言っていた、「恋は1人でもできるもの」という言葉の意味を、知っていても理解はしたくない。
と、そう思っていたのに、最近のフロイドはおかしい。
やたらと甘い声で僕の名前を呼ぶようになったし、2人で出かけてもどこかに消えたりしなくなった。
約束もそこそこ守るようになって、2人で会うのに理由がいらなくなった。
それから、僕の部屋に遊びに来る日は、朝まで一緒に眠るようになってしまった。
おかしい。おかしい。
そう思うのに、僕はその変化を咎められない。
2人でシーツの上に寝転んでいる時、抱き着いてくる彼の腕を振りほどけない。
「アズール」
ああ、そんな愛おしいというような瞳で、僕を見ないで。
本当はフロイドのことを見るたび、考えるたび、胸が痛くなるのだということを気付かれたくないから。まだ知らんぷりをしていたいから。
だから、お願い。こっちを見ないで。
