フロアズでさしすせそ - 6/6

そっぽ向いてて


期待はしないようにしている。フロイドはとても自由なヤツだから。

もしかしてコレは恋なのではと思うのと同じくらい、そんなわけないことを思い知らされているから。

まるでデートのように2人で出かけることがあっても、彼が僕と最後まで一緒に過ごしたことはない。

たまにベッドの上で戯れることがあっても、次の瞬間「それじゃあ、バイバイ」と言えるヤツなのだ。

コッソリ会う約束をしていても、言い出しっぺのアイツが時間通りに来るということはないし、約束をすっぽかして誰かと遊んでいることもある。

でも、それを咎めたりはしない。僕にそんな権利はない。

ならば“遊び”だと考えればいい。これは恋ではない、遊びなのだと。

フロイドが、僕という生き物に厭きてしまうまでの遊びだ。

それまで、コチラも勝手にルールを作って、ゲームとして楽しめばいい。

簡単だ。

好きになってはいけない。本気にしてはいけない。そういうゲームだ。

いろんな書物にも書いてあることなので有名な話ではあるが、恋とは、好きになった方が負けなのだそうだ。

勝ち負けであるならば、負けたくはない。

彼が僕に厭きるのが早いか、僕が彼を好きになってしまうのが早いか。

そんなつもりなかったのに、なんて台詞は言わせてやらない。

そちらが勝負に負けたのですよ、と笑ってやるぐらいではないと、僕の気が済まない。

誘ってくるのは、いつもアイツなんだから。

それを受けるか受けないか、主導権は僕にあるんだ。

だったら、恋と呼ぶかどうかは、僕に決める権利があるって思いたい。

誰かが言っていた、「恋は1人でもできるもの」という言葉の意味を、知っていても理解はしたくない。

 

と、そう思っていたのに、最近のフロイドはおかしい。

やたらと甘い声で僕の名前を呼ぶようになったし、2人で出かけてもどこかに消えたりしなくなった。

約束もそこそこ守るようになって、2人で会うのに理由がいらなくなった。

それから、僕の部屋に遊びに来る日は、朝まで一緒に眠るようになってしまった。

おかしい。おかしい。

そう思うのに、僕はその変化を咎められない。

2人でシーツの上に寝転んでいる時、抱き着いてくる彼の腕を振りほどけない。

「アズール」

ああ、そんな愛おしいというような瞳で、僕を見ないで。

本当はフロイドのことを見るたび、考えるたび、胸が痛くなるのだということを気付かれたくないから。まだ知らんぷりをしていたいから。

だから、お願い。こっちを見ないで。