新郎新婦には程遠い僕らの、
毎日毎日、「おはよう」と「おやすみ」をくりかえして。時々くだらない喧嘩をして、拗ねてみたり、許してみたり。大声で文句を言って、家出をしてみたりして。
仲直りには、美味しいものを食べさせ合ったりして。
ナイフとフォークにスプーンが仲間入りするように、出来れば傍にいて。
一緒にいられない夜は、寂しさに恋の歌を歌ってみたりして。そしてもっと会いたくなったりして。
近すぎず遠すぎず、褒めすぎず貶しすぎず。歩調が合った時には、笑い合ったりする。
ちょうど良い距離を測ってみたら、なんと背中合わせで。
本当に背中を合わせたら、ジンと温かくて眠たくなったりして。
見知らぬ人同士のように、相手を尊重することを忘れずにいて。
ハグやキスや、セックスをして。
たまには、イチゴと生クリームがたっぷりのクレープを分け合うようなデートをして。
半年に1度は、互いの好きなところをしたためてみたりする。
そのうち相手の手や顔が皺だらけになって、出来ないことが多くなって、見せたくないものまで見せ合うようになって。
「もう死んじまえ!」って言い合いながら、おじいさんになっても手を繋いでいる。
あなたと一緒にいるということが“そういうもの”なら、僕はあなたと共に生きてみてもいい。
「え、それってプロポーズ?」
「ええ」
「マジで。ちょっと、待って。最初の方、ちゃんと聞いてなかった」
「……」
「まって、まって、思い出す。なんか、えっと「いただきます」と「ごちそうさま」を言うんだっけ?」
「……」
「え、ちがう? 違うの? えー、えー?」
「……」
「ナイフとフォークとスプーンが出てきたのは、覚えてんだけどぉ」
「フロイド。あなた、お腹空いているんでしょう。厨房にでも行ってきたらどうですか」
「アズールは?」
「もう寝ます」
「じゃあ、オレも寝る」
「お腹は?」
「空いてない。から、もっかい言って」
「また気が向いたら」
「あー、もう。アズールの気分屋ー!」
「お前にだけは言われたくない!」
「……」
「……」
「ねー、手ぇつなご」
「いつもは勝手につなぐくせに、どういう風の吹きまわしですか」
「いいから。手、つなごうよ。おじいちゃんになるまで」
「それって、プロポーズですか?」
「うん」
「人の文句をパクるな」
「だって! アズールが意地悪すんだもん」
「そういうのは、自分の言葉でどうぞ」
「……。考えとく」
「そうしてください。じゃあ、はい」
「?」
「手、つなぐんでしょ?」
「…… つなぎマス」
