フロアズでさしすせそ - 3/6

新郎新婦には程遠い僕らの、


毎日毎日、「おはよう」と「おやすみ」をくりかえして。時々くだらない喧嘩をして、拗ねてみたり、許してみたり。大声で文句を言って、家出をしてみたりして。

仲直りには、美味しいものを食べさせ合ったりして。

ナイフとフォークにスプーンが仲間入りするように、出来れば傍にいて。

一緒にいられない夜は、寂しさに恋の歌を歌ってみたりして。そしてもっと会いたくなったりして。

近すぎず遠すぎず、褒めすぎず貶しすぎず。歩調が合った時には、笑い合ったりする。

ちょうど良い距離を測ってみたら、なんと背中合わせで。

本当に背中を合わせたら、ジンと温かくて眠たくなったりして。

見知らぬ人同士のように、相手を尊重することを忘れずにいて。

ハグやキスや、セックスをして。

たまには、イチゴと生クリームがたっぷりのクレープを分け合うようなデートをして。

半年に1度は、互いの好きなところをしたためてみたりする。

そのうち相手の手や顔が皺だらけになって、出来ないことが多くなって、見せたくないものまで見せ合うようになって。

「もう死んじまえ!」って言い合いながら、おじいさんになっても手を繋いでいる。

あなたと一緒にいるということが“そういうもの”なら、僕はあなたと共に生きてみてもいい。

 

「え、それってプロポーズ?」

「ええ」

「マジで。ちょっと、待って。最初の方、ちゃんと聞いてなかった」

「……」

「まって、まって、思い出す。なんか、えっと「いただきます」と「ごちそうさま」を言うんだっけ?」

「……」

「え、ちがう? 違うの? えー、えー?」

「……」

「ナイフとフォークとスプーンが出てきたのは、覚えてんだけどぉ」

「フロイド。あなた、お腹空いているんでしょう。厨房にでも行ってきたらどうですか」

「アズールは?」

「もう寝ます」

「じゃあ、オレも寝る」

「お腹は?」

「空いてない。から、もっかい言って」

「また気が向いたら」

「あー、もう。アズールの気分屋ー!」

「お前にだけは言われたくない!」

「……」

「……」

「ねー、手ぇつなご」

「いつもは勝手につなぐくせに、どういう風の吹きまわしですか」

「いいから。手、つなごうよ。おじいちゃんになるまで」

「それって、プロポーズですか?」

「うん」

「人の文句をパクるな」

「だって! アズールが意地悪すんだもん」

「そういうのは、自分の言葉でどうぞ」

「……。考えとく」

「そうしてください。じゃあ、はい」

「?」

「手、つなぐんでしょ?」

「…… つなぎマス」