奇怪
(!モブキャラ注意)
お嬢様の話か? お前でもう何人目だろうな。
いや、みんな聞きたがるんだ。
あんなに熱を上げていたあの男を、なんで諦めたのかってな。
あのパーティーの日、お嬢様についていたのは俺だけだったしなぁ。
あの日、お嬢様はあの男を手に入れる算段をずっとしていたよ。
男の弱みを握ったとか言っていたな。なんでも、恋人との逢瀬の写真を手に入れたから、その恋人で揺すってやろうと考えたらしい。
と言っても、お嬢様が話しかけたのはあのモストロ・ラウンジのオーナーだったんだが。
お嬢様の話を、あのオーナーの青年は神妙な顔をして聞いていた。
もしかしたら、彼もあの男と女を取り合っていたのかもしれない。
名前は、とか。あと、恋人の愛を試す、とか言っていた。傍仕えとはいえ、さすがに全部を盗み聞くわけにもいかないだろう?
俺が推察するに、あの青年もあの男から想っている女を取り戻したかったんだろうよ。
そして、お嬢様の話を聞き終えた彼は、小瓶を2本取り出した。
中には、甘そうなはちみつ色の液体が入っていたよ。
それから、これは俺にもはっきりと聞こえたんだが、
「この液体を彼と一緒に飲んでください。もし貴女が間違えれば、貴女の中から彼への気持ちが消えてしまいますが、間違わなければ、彼はあなたを恋人だと思うようになります」
ってなことを言った。
お嬢様は「愛する人を間違えるわけがない」と笑っていたよ。あの男は特徴的だから、見間違うことはないだろうと俺も思った。
彼は一瞬辛そうに顔を歪めたが、「頑張ってください」とお嬢様に声をかけた。ライバルに同情したのかもな、お優しいこって。念押しに、あの男の名前を繰り返してくれたしなぁ。
お嬢様は意気揚々とその場を離れ、あの男を探し始めた。
男はすぐに見つかったよ。人気のないテラスで外の空気を吸っていた。
間違いなくあの男だった。左目が金色で、色の濃い髪の束も左側に垂れていたからな。
お嬢様が淑やかに挨拶をすると、あの男は微笑んで挨拶を返した。まんざらでもなさそうに、俺には見えたね。
少しの間、2人は話をしていた。かの青年の話もしていたようだ。
そして、ついにお嬢様があの小瓶を取り出したのさ。
あの男はお嬢様と乾杯をした後、その液体を飲み干した。
それなのにお嬢様は、あっさりあの男と別れて、パーティー会場に戻った。
で、俺に聞いたんだ。
「さっき一緒にいた男は、どなただったかしら」ってな。
何、写真? さあ、俺は何も知らんよ。
