フロアズであいうえお - 6/6

おみやげ


「はい、コレ」

小ぶりな袋を手渡しながら、フロイドがそう言った。

VIPルームの執務机でシフト管理表を制作していたアズールが、ドアの開く音に顔を上げて間もなくのことである。ノックの返事も聞かずに部屋に入ってくるのを叱るのは、もう諦めた。

白地に青い波線模様の入ったマチ付きの袋は、ふくっと膨らんでいる。渡されるがまま受け取ったアズールは、その硬い感触とずしりとした重さに眉をひそめた。

「フロイド、頼んでいたお使いはどうしたんですか」

「ちゃんと行ってきたよー。荷物は全部厨房に運んできたし。それは、プレゼント」

「プレゼント?」

「そー。自分の小遣いで買ったから問題ないでしょ?」

あー、疲れた!と去っていこうとするフロイドを、アズールは慌てて引き留める。

「ちょっと待ってください」

「えー?買いだし終わったら休憩していいって言ったの、アズールじゃん」

不満気な声で振り返る相手に、アズールは当惑顔で尋ねた。

「僕、今日誕生日ではないですよ」

「は?知ってるけど」

「え。じゃあ、何かの記念日ですか」

「何言ってんの」

「だって、プレゼントなんて、貰う理由が」

見当たらない、と彼は目を泳がせた。それを見て、フロイドは「あー」と気の抜けた声を出す。

「プレゼントじゃダメ? じゃあ、おみやげでいいよ」

「お土産」

いつもの市場に行ったお土産とは、これいかに。

呆然とするアズールの元に再び戻ってきたフロイドは、アズールの手から袋を抜き取り、袋を止めてあったテープを取り去った。そして、中身を取り出す。

「これ、ペーパーウェイトなんだって。果物屋の近くに雑貨屋あるじゃん。あの店先に飾ってあってー、海の中みたいできれいだなーって。アズール、きれいなもの好きでしょ?」

「あ、え、ええ」

「だから、喜ぶかもって思ってさー。はい、手ぇ出して」

言われて出した手のひらの上に、海の深い青を煮詰めたようなカタマリが乗せられた。

確かに綺麗だ。故郷の海の底も、こんな風に青かった。

ぼうっと見とれていたアズールは、ハッとしてフロイドを見上げた。

「た、対価を、何か」

「でた! アズールの対価!」

「タダより高いものは世の中にないんだよ」

「それ、何回も聞いたー」

対価ねぇ、と言いながら、フロイドは手に持っていた紙袋を弄る。

「あ! はい!」

「はい、フロイド」

「今度の休日は、オレと海の中で過ごしてよ」

紙袋をひらひらと動かしながら、彼は笑った。

「オレと、デートすんの!」