いただきます
フロイドの一口は大きい。ガッと口を開いたと思ったら、素早く尖った歯で獲物に噛みつく。今日のランチメニューであり彼の獲物だった照り焼きチキンとスクランブルエッグのサンドイッチは、その3分の1ほどがその口の中に吸い込まれていった。
口に物を入れた後は、その前の豪快さに比べて随分大人しい。
くちゃくちゃと不快な音を立てるでもなく、しっかり閉じられた唇が少しだけ咀嚼の動きにつられて動くだけ。相変わらず身体をユラユラと揺らしながら、何を考えているのかよく分からない表情で、齧り取った歯形を眺めている。
咀嚼の途中で、長い舌が上唇についたソースを舐めとった。あの舌を見ると、いつも爬虫類のようだと思う。彼は魚類のはずなのだが。いや、今は哺乳類か。
そうしている間に、喉仏がグッと上に動き、3分の1のサンドイッチは彼の腹の中に消えた。
「あのさぁ」
2口目に行く前に、彼がそう言ってこちらを見た。
「さっきから、何見てんの。そんなに食べたいなら、一口食べる?」
「いえ、僕にはサラダがまだ残っていますし」
「じゃあ、なに」
そう言って顔をしかめるフロイドは、怒っているわけではなさそうだが、なぜか気まずげにしている。
「フロイドは一口が大きいな、と」
「えー、いまさらー」
「羨ましいです」
口の端に残ったソースが目について、指でふき取る。途端、フロイドの体が後ずさり、キュッとその口がへの字を描く。
驚いた僕と同じように、彼も特徴的な色違いの目を丸くしていた。
「おやおや」
後ろからジェイドのクスクス笑う声がする。フロイドは貝の中に残った砂を噛みしめたような顔で、僕を挟んで反対側に腰かけている兄弟に目をやり、「ジェイドぉ」と恨めしそうな声を出した。
